登山用のバックパックは多くのモデルがあるため、どれを選べばいいのか迷ってしまいますね。
登山道具店に行くと30~40種類のモデルが並んでいることも珍しくありません。
ですが間違ったものを選んでしまうと
- 必要な荷物が収納出来ない
- 登山中に肩や腰が痛い
- 重心が振れて歩きにくい
- 荷物が重く感じる
などのトラブルに見舞われてしまいます。
そこで今回は
バックパックの選び方を知りたい
バックパック選びで失敗したくない
登山初心者の方へ向けて、登山歴10年で大小15個以上のバックパックを背負ってきた経験をもとにポイントを3つにまとめました。
(実は私もデザイン優先で選んで登山中に後悔したことがあります…)
自分に合ったバックパックを選ぶことが出来れば、山行中に体の痛みや疲労が軽減されてより楽しく、より遠くまで歩くことが出来るでしょう。
この記事があなたの相棒となるバックパックの選択の一助になれば幸いです。
【バックパック】には【リュック】や【ザック】など複数の呼び方がありますが、全て同じものを指します。
この記事ではバックパックで統一しています。
バックパック選びでチェックするべきポイント3つ
結論、確認するべきポイントはこの3つです。
- 荷室の容量
- バックパックの種類
- フィッティング
バックパックにはメーカーごとに様々な特徴や機能があますが、まずは自分の目的に適したものを選ぶことが重要です。
まずは自分に合ったモデルを絞り込み、その中から機能や特徴を比較して選びましょう。
荷室の容量
バックパックは自分の登山目的に合った容量を選ぶことが大切です。
例えば”日帰りハイキング”と、”テント泊で縦走”を同じバックパックで行うのは難しいでしょう。
また同じ日帰りでも”大型のカメラ機材を持っていく”となると荷物の量は大きく増加します。
バックパックに求められる容量は季節や行程、荷物の量によって個人差もあります。
自分の使用目的を想定してからサイズ選びをしましょう。
温かい時期に近くの山にハイキングに行こうと思っている
富士山に登るのに1泊小屋で泊まるつもり
冬にテント泊をやろうと思っている
などなど…
容量はリットル単位で表示されモデル名や商品タグに記載されているので必ず確認しましょう。
バックパックの大きすぎは小を兼ねない
例えば日帰りの荷物を70Lサイズのバックパックに入れるような使い方はNGです。
容量が多きすぎると中身がスカスカになりパック内で荷物が振れたり、整頓できないため重心が偏ったりと背負っていて疲れてしまいます。
多少大きい分にはコンプレッションストラップなどで調整も効きますが、過度に大きいものは選ばないようにしましょう。
・15~25L 日帰り登山
日常でも使える、いわゆるデイパックのサイズ。
日帰りだと荷物も多くないので容量としては15~25L目安で選ぶと良いでしょう。
ハイキングのような日帰り山行であれば15~20Lで十分。
春秋に防寒着を入れたり、料理するためクッカーを持っていく場合は25L前後あると安心です。
日帰りでの持ち物は以下の記事で解説しています。
・25~45L 山小屋泊~温かい時期のテント泊
山小屋泊となると追加の荷物として着替えやインナーシーツなども増えます。
夏山などの温かい季節の小屋泊であれば25~35L程。
春秋の朝晩に冷える時期だと防寒着など荷物量が増えるので35~40Lで考えましょう。
40Lを超えると荷物を最小限に、コンパクトなもので揃えれば夏山でのテント泊も出来るサイズになってきます。
この容量帯がバックパックの種類も一番多いボリュームゾーンです。
30Lあれば無積雪期の小屋泊や、日帰り登山用として違和感無く兼用できるため、初めてのバックパックにオススメです。
・45L~70L テント泊・長期縦走用
衣食住を全て詰め込む必要があるテント泊を快適にしようと思うと、このくらいの容量が目安になります。
70Lサイズであれば3~4日間のテント泊でも十分荷物が収まるでしょう。
日程・季節によって必要な容量は大きく変わってきます。日程は、持っていく食料、冬山装備の有無など目的によって容量を決めます。
このクラスで自分に合った容量を選ぶのは、ある程度登山経験が必要でしょう。
初めての夏山テント泊であれば55~60Lあれば容量に余裕もありオススメです。
バックパックの種類
バックパックには目的に応じて多様なモデルがあります。
タグに「このバックパックは〇〇用」と書いてないので初心者には分かりづらいのですが、商品の特徴から大まかに以下の種類に分類できます。
- トレッキングバッグ
- クライミングバッグ
- トレイルランニングバッグ
- アタックザック
この中で登山初心者向けにオススメはトレッキングバッグです。
トレッキングバッグ -初心者にオススメ-
腰で荷物を支える構造をしており一般の登山道を歩くのに適したタイプ。
どのメーカーも一番チカラを入れており登山用品店で扱っている種類が一番豊富。
- 長時間でも安定して背負えるように各ハーネスのパッドが厚く、調整も細かくできる
- 背面構造が柔らかいパッドで背負い心地が良かったり、メッシュ構造で汗抜けやすくなっていたりする
- ナイロンやポリエステルの強靭な生地が使われており耐久性が高い
- ポケットが多く、サッとものを出し入れするのに便利
- 機能が充実している代わりに多少重量がある
- 人によっては使わない余計な機能もある
クライミングバッグ
●クライミングバック
主に手足を使って自然の岸壁を登るクライミングために作られているバッグ。
余分な機能が省かれてシンプルな形状をしており、クライマーや登山に慣れた人向け。
雪が付着しにくい作りのため雪山で使用されることも多い。
- シンプルな作りのため軽量なモデルが多い
- 岩や木の枝にスレる前提で、丈夫な素材が使われており耐久性が高い
- 背面構造はスッキリしたパネルが多い
- トレッキングタイプと比較してハーネスは薄く簡易的。ウエストハーネスを取り外せるモデルもある
- 背面長が調整できない
- サイドポケットなどの収納が少ない
トレイルランニングバッグ
山の中を背負って「走る」ことに特化したタイプ。
登頂を目指すのでは無く、トレイルを快適に走るための機能が充実している。
- 非常に軽量
- 「背負う」よりも「着る」に近い感覚で、体へのフィット感が高い
- バックパックを降ろさなくても物が収納できるように、前面にポケットが多いなどの工夫がされている
- 容量は小さい
- 生地が薄く耐久性が低い
アタックザック
山小屋やテントから山頂へ往復するときに使うためのバッグ。
あくまで補助的な用途に使うもので、最低限の装備で素早く行動したい時に活躍する。
大型のバックパックの中には雨蓋を取り外してアタックザックとして使えるものもある。
- 簡素な作りのため非常に軽い
- 折りたたんでコンパクトに収納できる
- 耐久性は低いものが多い
- 容量が少ない
- ハーネスや収納の作りも最低限
大きく別けて4種類を紹介しましたが、トレッキングバッグ以外のものは用途に特化しているものが多く、特徴をしっかりと理解してから選ぶ必要があります。
中には種類別けが難しい中間のようなタイプもありますが、登山初心者はまずトレッキングバッグを使ってみて、山歩きに慣れてから自身の好みのバックパックを選ぶようにしましょう。
フィッティング
バックパックを購入する時はお店で実際に背負ってみましょう。
機能や素材の確認も必要ですが優先するべきは自分の体にフィットするか、です。
通販ではサイズ感の確認や背負うことが出来ないため、実際の店舗でフィッティングするのが一番確実でしょう。
フィティングで重要なのは
- サイズ選び
- バックパックの背負い方
それぞれ解説していきます。
他の人にベスなものでも自分に合っているとは限りません。
人それぞれ体格、骨格が違う訳ですから、これを選べば間違いは無いというモデルは無いのです。
評判の良いレビューを見かけても購入前に実際に背負ってから判断しましょう。
サイズ選び
バックパックのサイズ選びで重要なのが背面長です。
背面長とは背中の長さのことで、バックパックサイズ選びの基準となります。
中型以上のモデルになると衣服と同じで、背面長ごとにS・M・L、メンズ、レディースとサイズ展開しているメーカーは多く、誤ったサイズを選ばないためにもまずは背面長を確認します。
背面長の測り方
- 首を前に傾けて首の後ろの一番突起した骨(第七頚椎骨)を探す。ここが計測のスタート。
- 背骨に沿って下に降りてきて、左右腰骨最上端をつなげた水平のラインと交差したところまでの長さを測る。
測りづらい時は誰かに手伝ってもらいましょう。
店舗であれば専用の計測機があるところもあります。
背面長から各メーカーのサイズチャートに沿ってサイズを選びます。
自分に合うサイズが分かったら次は実際に背負ってみましょう。
バックパックの背負い方
トレッキング用のバックパックは荷重の大部分を腰で支える設計になっています。
間違った背負い方をしてしまうと、肩や首に負担が掛かり痛める原因となってしまいます。
バックパックの正しい背負い方を覚えましょう。
フィッティングは実際の使用感に近づけるため「重り」を入れて背負うことが重要
バックパックを扱っている登山用品店であればフィッティング用の重りがあるので店員さんに確認してみましょう
全てのハーネスを緩めた状態で背負います
荷物を固定するためのコンプレッションストラップは締めたままでもOKです
ウエストハーネスが腰骨を包むように締めます
骨盤のわずかに上あたりで調整して荷重が腰にしっかりと乗るようにしましょう
たまにくびれの部分で締めている人も居ますが上すぎです
ショルダーハーネスを引き、肩から脇に掛けてハーネスが密着するように調整します
引きすぎると荷重が腰から抜けて肩に掛かり、長時間の歩行で肩が痛くなってしまうのでウエストハーネスがズレないよう適度に
チェストハーネスはショルダーハーネスがズレないようにするためのもの
きつく締める必要はなく、緩んでいなければ大丈夫です
高さ調整出来る場合は脇の高さほどで苦しくならない様に調整します
ショルダーハーネスの上にあるストラップがスタビライザーで、引くとバックパックが体に近づくため横振れを防ぎフィット感が向上します
締め過ぎるとショルダーハーネスが肩のラインから浮いてしまうので注意
ザックを背負ったら痛みや違和感が無いかを確認します
- 荷重はしっかりと腰に乗っているか
- ショルダーハーネスと肩のラインの間に隙間が無いか
- 背中・肩・腰に痛みや違和感がないか
これらを確認し、合っていなければハーネスや背面長を調整してもう一度、それでもしっり来ないのであればそのバックパックは自分に合っていないということになります。
「違和感とかよく分からん」という方は複数のモデルを試して違いを確認しましょう。
各メーカーでハーネスや背面の作りは違います。
いろいろ試しすことで自分に合ったものを見つけましょう。
- 小型サイズのバックパックはウエストハーネスが簡易的であったりスタビライザーが省略されていたりしますが、荷物も少ない用途のため、フィッティングにシビアになる必要はありません。
- バックパックの背面長が固定されているモデルと調整が出来るモデルがありますが、中型サイズ以上を購入するのであれば背面長が調整出来るモデルをオススメします。私の経験から、お店で背負った時は適切だと感じても、実際に荷物を詰めて山道を歩くと違和感が出てくることもあります。そんな時、背面長を微調整してあげることで違和感が解消するケースは珍しくありません。
まとめ
バックパックを選ぶ時のポイントまとめ
- 目的に合った容量のものを選ぶ
-
日帰り、小屋泊、テント泊、長期縦走と自分の目的に合った容量を選びましょう
- 用途に合った種類のものを選ぶ
-
初心者はトレッキングバッグがオススメ
- 自分の体にフィットしているか確認する
-
実際に背負って体にフィットしていか試して確認する
複数の種類フィッティングしてみる
今回紹介したポイントを押さえた上で自分の好みのデザイン、色や機能の有無で最終的に山での相棒となるバックパックを決めましょう。
have a nice trekking!